この記事では、SLA(第二言語習得)理論にもとづく記憶のメカニズム、そして英文法の覚え方を解説します。
この記事でわかること
- 記憶のメカニズムについて
- 英文法の効果的な覚え方
記憶のメカニズムを知る
そもそも、私たち人間はどのようなプロセスを経て物事を覚えているのでしょうか。
じつは、言語学習であろうとなかろうと、記憶のプロセスはまったくおなじ経路をたどっています。
記憶のプロセスは3段階ある
下の図は、1970年代にアトキンソン氏とシフリン氏によって体系化された有名なモデル。
3段階記憶モデルです。
感覚記憶
聴覚や視覚によって知覚した情報を、そのままの形で数秒だけ保持する記憶のことです。
たとえば電車や街中の広告。
無意識でなにも考えずに広告をみても、それはただ目の前の情報を知覚しているだけですぐに忘れてしまいます。
つまり、感覚記憶で処理しているということです。
短期記憶
感覚記憶とは違い、意識的にコントロールされた記憶の段階。
たとえば電話番号やクレジットカード番号を入力するときに、数字を忘れないよう意識に留めておく状態を指します。
いったん短期記憶プロセスに留めておいた情報も、なにもせずそのまま放置しておくと最大15秒もたたずに記憶から消えていきます。
短期記憶に保持し続けるためには、反復することが重要です。
これをリハーサル(内語反復)と呼びます。
リハーサルには維持リハーサルと精緻化リハーサルの2種類あります。
- 維持リハーサル
:情報を機械的に反復する - 精緻化リハーサル
:すでに知っているさまざまな情報との関連づけ/知覚した情報の位置づけをおこないつつ反復する
維持リハーサルがその場に必要な情報を留めておくための反復であるのに対し、精緻化リハーサルは短期記憶から長期記憶に転送しようとするための反復です。
長期記憶
情報をデータベースとして半永久的に蓄えている記憶のことで、いわゆる「知識」と私たちが呼んでいるのはこの長期記憶の段階を指します。
大きく、顕在記憶と潜在記憶の2種類があります。
顕在記憶は別名「宣言記憶」とも呼ばれており、記憶から意識的に取り出して言葉によって説明できる記憶のこと。
これに対して潜在記憶は、記憶を意識的にたどることはしなくても活用できる記憶です。
各プロセスで意識すべきこと
感覚記憶/短期記憶/長期記憶それぞれのプロセスが具体的にわかりました。
これまでの説明をまとめると、英文法学習において各プロセスで意識すべきことは以下になります。
- STEP1:感覚記憶(短期記憶につなげるために、意識して情報を知覚)
- STEP2:短期記憶(長期記憶につなげるために、知覚した情報を既知の情報と関連づけつつ保持)
- STEP3:長期記憶(情報を潜在記憶として保存するまで、情報を反復)
大枠でなんとなくイメージできたでしょうか。
英文法学習の基礎ルール
それではここから、記憶のメカニズムをふまえた単語学習の基本的なルールを解説していきます。
ルールはぜんぶで4つ。
- 回転率をあげる
- イメージを掴む
- 身近なものとリンクさせる
- 人に説明する
それぞれ詳しくみていきましょう。
回転率をあげる
英文法を学習していてよくやりがちなのが、『1ヶ月かけて1周してからまた1ページ目から復習する』を繰り返すこと。
絶対にやってはいけません。
重要なのは、短期間でおなじ英文法を復習することです。
エビングハウスの忘却曲線
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは人の記憶力について研究をし、以下のような曲線で記憶の定着・忘却が行われることがわかりました。
噛み砕いて説明すると、復習の時間をどれだけ節約できるかを示しているのがエビングハウスの忘却曲線です。
つまり、覚えた内容をはやいうちに復習すればするほど、節約率は高くなり復習に時間を使わずにすむということ。
いかに回転率をあげて復習の回数を多くするかが、長期記憶への定着へと繋がります。
イメージを掴む
英文法の参考者をみると、文字の羅列ばかりでぜんぜん頭に入ってこないことありますよね。
文字だけだと覚えるの辛いなと思うわけです。
そんな時に便利なのが、Google画像検索。
たとえば、日本人が苦手とする「現在完了」で検索したとします。
すると下のように、現在完了のイメージが図で出てくるというわけです。
文字だけだとなかなか理解できないことでも、画像があれば腑に落ちることってありますよね。
文法をイメージで掴むことで、スピーキングの時にも「使える英文法」として活きてきます。
身近なものとリンクさせる
ラーニングピラミッドをご存知でしょうか。
どんな学習方法が記憶により定着しやすいかというもので、下の図のうち赤線で区切った上の4つの方法が定着しにくく、下にいけばいくほど定着しやすい学習方法です。
英文法学習で話をすると、ただただ英文法の説明を読んでいるのか、工夫して覚えるかで定着率がかなり変わります。
そこでおすすめなのが「英文法の例文を自分の身近なもので作ってみる」覚え方。
たとえば「現在完了形」だったら、英単語学習を昨日からはじめていたとすると「I have learned fifty vocabularies since yesterday.」と文章をつくれますよね。
ふだん生活している中で無意識的に触れている・見ているものは数えきれません。
そしてそれらと英文法をリンクさせるやり方は、シンプルですが非常に効果的です。
人に説明する
4つめ、最後のルールは「人に説明する」です。
じつは、物事を定着するさいに最も効果的なのが、人に説明するやり方。
先ほどのラーニングピラミッドをもう一度みると、なんと「人に説明する」は学習定着率が90%と圧倒的な数値です。
しかし「人に説明する」というのは、なかなかハードルが高いかもしれません。
その場合は、独り言で自分に説明してあげましょう。
大事なのは、アウトプットしたときにちゃんと説明できているかどうか。
知っていることと、それを説明できることの理解の差は大きいです。
効率的に英文法を覚えるために、基礎ルール4つはかならず守りながら学習しましょう。
英文法を覚えるための具体的なやり方
ここまで、英単語を覚えるための基礎ルール4つを説明しました。
それではつぎに、レベル別の具体的な学習方法について。
目的別に、英会話力を伸ばしたい場合と、TOEICスコアを伸ばしたい場合でおすすめの英文法教材とその使い方を解説しています。
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