この記事では、スピーキングテスト『VERSANT』の信頼性がどれくらいあるのかを検証し、TOEICスコアやその他試験との相関関係についても解説。
そして、VERSANTテストの効果的な対策方法をお伝えします。
この記事でわかること
- VERSANTテストの信頼度
- TOEIC/TOEFL/IELTSなどとの相関関係
- VERSANTテストの効果的な対策方法
VERSANTの具体的な対策については、英会話力をあげる方法と、すぐにスコアが上がるテクニックについても言及しています。
※本記事で使用するグラフや図の出典
『Versant English Test Test Description and Validation Summary』
『Versant公式サイト』
VERSANTテストの概要
VERSANTテストは、米国防省やオランダ政府移民局などの政府機関をはじめ、国内外のグローバル企業でも採用されているテストです。
versant公式サイトより引用VERSANT®は、仕事で使える実践的な英語力を測るテストです。
従来のテストとは異なり、試験の実施と採点までが短時間で行えます。
ピアソンで開発された高度な自動言語認識システムを利用しており、スマホアプリやパソコンがあれば日時や場所を問わず受験ができます。国内外の大手グローバル企業での採用のほか、米国防省やオランダ政府移民局などの政府機関でもそのシステムが導入されるなど、信頼性の高いテストです。
VERSANTテストの特徴4つ
おおきく4つの特徴があります。
特徴4つの詳細は後述していますが、まずはおなじスピーキングテストの『TOEIC Speaking Test』と比較してみました。
結論からいうと、試験を受けるまでのハードルの低さや受験当日の時間と場所、さらには結果通知の速さまで、VERSANTテストはあらゆる点で『TOEIC Speaking Test』を上回っています。
テスト名 | 予約 | 費用 | 時期 | 場所 | 時間 | 結果通知 | 採点方法 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
VERSANT | 不要 | 5,500円 | 24/365 | どこでも | 20分 | 終了5分後 | AI |
TOEIC SpeakingTest | 必要 | 7,810円 | 月1回 | 指定会場 | 20分 | 試験から1ヶ月後 | 人 |
つづいて、VERSANTテストの特徴4つを詳しく解説していきます。
場所や時間を選ばずに受験できる
まずなんといっても、受験予約が不要なのは嬉しいですね。
スピーキング力を測りたいと思った時にすぐ受験できて結果もすぐにわかるので、受験予約の手間がないだけでなく、試験日まで待つ必要がないのでモチベーションを保つためのツールとしても最適です。
受験環境は、インターネットとスマホまたはパソコンがあればOKという手軽さ。
試験時間は約20分
VERSANTテストの試験時間はおよそ20分、セッティングなどを含めても30分以内に受験を終えられます。
拘束時間が少ないので、忙しい方でもスキマ時間でぱっと受験できます。
政府機関やグローバル企業で採用される
この記事冒頭でもお伝えしましたが、VERSANTテストは国内外の大手グローバル企業や、米国防省やオランダ政府移民局などの政府機関でもシステムが導入されています。
人の採点を省き最先端のAIを活用
最先端のAIを使った言語認識&自動採点システムでスピーキング力が採点されます。
人の採点をゼロにすることで、純粋かつ公平な英語力の測定を可能にしています。
VERSANTテストの信頼性はどれくらい?
VERSANTテストで気になるのが、その信頼性です。
政府機関などに採用されているとはいえ、どのような基準を設けて信頼性を担保しスコアに反映させているのか。
『折半法(Split-half method)』という古典的テスト理論に基づいているよ!
『折半法(Split-half method)』とは、【おなじような問題を出したときに、スコアがどれだけブレるか】を計測する理論のこと。
つまり、スコア結果が一致していれば(=数値が1に近ければ)、それだけ評価にブレがなく信頼性があるといえます。
VERSANTテストはどうでしょうか。
下の図は、テストを受けた人のおなじ回答を、機械(VERSANTが導入するAI)と人間(英語能力評価について充分な訓練をされている者)がそれぞれ評価したときのブレを表したものです。
数値が1に近いですよね。
また、下の図は機械の採点と人間の採点をグラフ化したものですが、採点結果がほとんど同じになっています。
機械と人間の採点による相関係数はOverall(総合スコア)で0.97と、非常に強い相関関係を示しています。
つまり、機械による評価と人間による評価は事実上区別をつけることができないということです。
TOEIC/TOEFL/IELTSとの相関関係
VERSANTテストは、TOEIC/TOEFL/IELTSなどのスコアとも強い相関を示しています。
0.7以上の相関は強い相関を示すと言われており、この数値からもVERSANTテストの信頼性は高いといえます。
ただし注意したいのは、TOEICスコアを伸ばしたからといってVERSANTスコアが上がるわけではないという点。逆も然りです。
ここで私が言いたいのはVERSANTテストの信頼度がどれくらい高いかということ。
TOEICとVERSANTに相関関係があるからといって、どちらかのスコアをあげればもう片方があがるとは思わないようにしましょう。
VERSANTテストを知る
VERSANTテストの信頼度が高いことがわかったので、ここからはVERSANTテストをより深く知っていきましょう。
これまでに受けたことある人/これから受けようと思っている人ともに、VERSANTテストを詳しく知ることでこれからの英語学習がより効果的なものになるはずです。
VERSANTの計測対象は「純粋な言語能力」
え、「純粋な言語能力」以外に何を測るの?
と思うかもしれません。
しかし、スピーキングテストの中には意図せずして「純粋な言語能力」以外を採点対象にしているケースがあります。
たとえばIELTSは人間がスピーキングテストの評価を行い、【IELTSスピーキングテストのコツ】についての記事をみると
試験官の目を見て話しましょう!
という記述を見かけます。
しかし、『目を見て話す』というのは言語能力ではなく『社会的な能力=ノンバーバルコミュニケーション』です。
試験官は非常に訓練された者なので基本的に英語力以外を評価することはありませんが、目を見ずに話している人と、目をしっかり見て話している人だとどちらの評価を高くつけそうでしょうか。
目をしっかり見ている人ですよね。
このように、採点に人が介在することで純粋な英語力を測れないケースがしばしば起こりえます。
VERSANTテストは人が介在せず、最先端のAIとデータを活用しているため、「純粋な英語力」のみを測定できているというわけです。
上の図はVERSANTテストスコアの累積分布ですが、ネイティヴのほとんどは高スコアとなり、英語学習者(非ネイティヴ)ではスコアにばらつきがでます。
テスト受験者の社会的属性は異なるので、この図からVERSANTテストが「純粋な言語能力」を測定できているといえます。
評価される4スキルの詳細と対象のパート
VERSANTテストは4つのスキルごとに点数をだし、総合スコアが示されます。
各スキルの定義は以下の通りです。
テスト内容はPartA〜Fの6項目。
下の図をみるとわかるように、発音/流暢さ/文章構文/語彙の4つのスキルが単体で各Partの測定対象になっているわけでなく、複合的に絡みあっています。
また、知っておきたいのが採点対象外の項目について。
PartA〜Dの1問目とPartF全問は採点対象外となっているので、PartA〜Dに関していえば1問目ができなかったからといって落ち込む必要はないということです。
日本人の平均スコアと理想のスコアを知る
日本人のVERSANT平均スコアは38点。
理想のスコア(ここでは、「ビジネスで最低限通用するスコア」と定義する)が47点なので、その差は9点です。
9点の差がどれくらい遠いかというと、VERSANTは『海外留学に1ヶ月行って、やっと1点あがる』と言われるほど難易度が高いテスト。
つまり、38点の人が英語漬けの毎日をおくり、9ヶ月後にやっと47点をとりビジネスで通用する最低限のレベルに到達するイメージです。
TOEICスコア800点をもっていても、実際のビジネスシーンで英語を話せない社員が多い…
という話をよく聞きますが、それもそのはず。
VERSANTとTOEICのスコア関係図を見れば、TOEIC800点以上でもスピーキングを苦手とする人が少なくないことがわかります。
TOEICスコアに応じてVERSANTスコアの平均点も上がってはいますが、あくまでも平均点。
TOEIC900点台を取っていても、VERSANTスコアが40点(ビジネスで通用できるレベルではない)の人も多くいます。
ここからは、文章構文/語彙/流暢さ/発音の4つのスキルそれぞれの理想的なスコアについて解説するよ!
先ほど、理想の総合スコア(ビジネスで最低限通用するスコア)は47点と述べましたが、じつはスキルごとにも理想のスコアがあります。
文章構文の理想スコアは47点。
47点以上が『多くの語句や文節を理解して使える。概ね正確で意味のある文を話せる。』とされており、VERSANTテスト運営団体によると日本人の約半数が47点をクリアしています。
文章構文力が47点未満の人は「ビジネスシーンで通用する表現の幅を身につけている目安」となる47点をまずは目指しましょう。
語彙の理想スコアは57点以上。
「日常会話で単語の大部分を理解できる」とは、日常会話で使われる多義語も含めて中学英単語を自然な流れの中で理解し使える状態を指します。
しかしこの点数は日本人のVERSANT受験者のうち16%と難易度が高いです。
まずは「はっきりと話されれば日常会話で使われる単語を理解し、使える」45点以上を目指しましょう。
「流暢さ」は日本人が最も苦手とする能力のひとつ。
『語彙や構文は知っていても中々思うように言いたいことが出てこない』と思う人の多くは、流暢さに課題があります。
VERSANTのデータによると、流暢さに欠けるとされる48点以下の人は、全体の7割に昇ります。
流暢さと同じように、日本人は『発音』も苦手です。
【LとRの区別ができない】が代表的ですが、この他にも【thの発音ができない】など日本語にはない発音が英語にはあります。
日本人には発音に苦戦する人がしばしば見受けられます。
まずは48点以上を目指し、弱点を克服しましょう。
VERSANTを対策する
これまでの説明で、VERSANTスコアはTOEICスコアと相関関係はあるものの、TOEICが高スコアだからといってビジネスで通用する英会話力は身につかないことがわかりました。
では、どのようにVERSANTテストの対策をすべきなのか。
効果的な学習方法と教材の使い方、そしてVERSANTスコアをあげるテクニックも紹介するよ!
本質的に英会話力をあげたい人は『効果的な学習方法と教材』を、とりあえずVERSANTスコアを少しでも伸ばしたい人は『テクニックでカバーする』をご覧ください。
スコアレポートから弱点を見つける
VERSANTテストを受験して5分以内にスコアレポートをみることができます。
VERSANT公式サイトトップページの右上にある「テスト結果を見る」をクリックすると
下のページに移るので、受験番号8桁とチェックマークを入れて「Get score」をクリックしてください。
すると、以下のようなスコアレポートが表示されます。(画像はVERSANT公式サイトに掲載のサンプル)
このうち2ページ目に【現在の能力】と【スキルアップに向けたアドバイス】が各スキルごとに細かく記されています。
スキルアップに向けたアドバイスをもとに今後の学習計画や予定を立てていくのが、ひとつの手と言えるでしょう。
効果的な学習方法と教材
とはいえ、具体的な学習方法やおすすめの教材が知りたい!
と思いますよね。
下の表を参照しながら、自分の弱点スキルを効果的に克服してください。
学習方法の詳細とおすすめの教材は、それぞれ以下の記事からどうぞ。
単語の学習方法
瞬間英作文の学習方法
『瞬間英作文の効果的なやり方|アプリや音声をつかおう。スピーキング力を自分で測定する方法も解説』
シャドーイングの学習方法
『シャドーイングの効果や知っておきたい注意点。正しいやり方とおすすめの教材も解説』
テクニックでカバーする
ここでは『とりあえずVERSANTスコアを少しでも伸ばしたい』という人のために、いわゆるテクニック的なことをお伝えします。
ぜんぶで3つ。
- PartAを練習する
- 完璧な文章を目指して発話しない
- できるだけ早く回答する
それぞれ詳しくみていきましょう。
PartAを練習する
え、練習って。テストなのに練習して良いの?
PartAだけはVERSANTテスト用紙にあえて文章が記載されているから、練習しても良いんです!
VERSANTのテスト用紙をみると、PartAの項目に8つの文章があります。
じつはこれらの文章、PartAでだされる問題そのまんま。
テスト本番の受験画面にも同じ文章がでてくるので、あえてテスト用紙に記載する必要はありませんよね。
それにも関わらずテスト用紙に書いてあるということは、『PartAは練習してもOKなのではないか』という解釈です。
なるほど。でもPartAって音読だよね?正しい発音とかイントネーションわからない…
Google翻訳を使おう!
正しい発音わからないし文章の強弱をどこに付けたら良いのかわからない、だから練習しても意味がないと思うかもしれません。
そこで使いたいのがGoogle翻訳。
たとえば、PartAサンプル問題1の『Ted is debating whether or not to change jobs.』を入力すると、以下のように表示されます。
赤丸で囲った音声ボタンをおすと、模範の音声が流れてきます。
模範の音声を聴いて文章の中でどこに強弱をつけるか確認したり、シャドーイングしましょう。
完璧な文章を目指して発話しない
VERSANTテストにおいて重要なのは、ひとつでも多くの単語を発話すること。
スピーキングテストだからと言って完璧な文章を発話する必要はありません。
たとえば以下の音声で
『come /visit us /next weekend?』が聞こえたら、そのほか何を言っているかわからなくても、聞き取れた単語だけでも発話すべきということです。
できるだけ早く回答する
これは大きく【流暢さ】のスキルに関わることですが、問題の提示後は考えこまずに早く回答したほうが良いです。
具体的には、問題の提示後0.5秒以内が理想的。
考えこむ癖がふだんからある人は意図せずに流暢さのスコアが下がってしまうので、とりあえず思いついたこと/聴こえたことをパッと発話することを強く意識しましょう。
これができるだけで流暢さのスコアが変わります。
英語スクールに通って伸ばす
本質的な英会話力をあげたいな…
と思っている方は、VERSANTテストを導入している英語コーチングスクールを検討しましょう。
英語コーチングスクールのプログリットとENDLEADは、受講時にVERSANTテストを複数回受けてコーチが結果をフィードバックしてくれます。
弱点を洗い出し、具体的な対策を立てて提示してくれるため非常におすすめのスクールです。