オーバーラッピングってシャドーイングとどう違うの?学習効果も知りたいな
オーバーラッピングの効果的なやり方なども含めて詳しく解説していくね!
結論からいうと、オーバーラッピングはシャドーイングの準備運動という位置づけ。
シャドーイングをするまえにオーバーラッピングをおこなうことで、学習効果がかなり高くなります。
この記事では、以下について解説していきます。
- オーバーラッピングとシャドーイングの違い
- オーバーラッピングの効果と注意点
- オーバーラッピングの効果的なやり方
この記事を読みこんで、正しいやり方でオーバーラッピングをおこないリスニング力を伸ばしていきましょう。
オーバーラッピングとは
オーバーラッピングとは、【英文を見ながら英語音声と同じタイミングで発音していく学習】です。
パラレルリーディングとも言います。
スポーツや習い事とおなじで、英語学習もアウトプットが必要。
「〇〇のやり方」のような本を読んでも、練習しないと上達しません。
学校の授業で学ぶ単語や文法のインプットはもちろん大事ですが、実際に発音することの高い効果は第二言語習得理論でも実証されています。
シャドーイングとの違い
シャドーイングとの違いはふたつ。「スクリプトを見るかどうか」「音声と同じタイミングかどうか」です。
項目 | オーバーラッピング | シャドーイング |
---|---|---|
学習の目的 | リスニング力 の向上 | リスニング力 の向上 |
スクリプトは 見るか | 見る | 見ない |
発音の タイミング | 同時 | 2−3語あと |
シャドーイングの学習イメージ↓
オーバーラッピングはスクリプトを見ながら行う学習ですが、シャドーイングはスクリプトを見ません。
そのため、シャドーイングの方が難易度が高いです。
参考:シャドーイングの効果や知っておきたい注意点。正しいやり方とおすすめの教材も|英語コーチが徹底解説
注意点として、オーバーラッピングとシャドーイングはふたつで1つの学習だと認識すること。
組み合わせることで高い学習効果を発揮します。
オーバーラッピングの効果
『オーバーラッピングには5つの学習効果があります。
オーバーラッピングによる具体的な効果
- 語彙力が上がる
- 単語の正しい発音・アクセントが身につく
- 英語の抑揚・リズムが身につく
- 英語特有の「音の変化」が身につく
- ネイティブが話すスピードに慣れる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
効果1.語彙力が上がる
オーバーラッピングの学習には「分からない単語や文法を調べる」というプロセスがあります。
「書く」「話す」といった運動神経を使った記憶は、「運動性記憶」と呼ばれます。運動性記憶の特徴は、一度覚えるとその後はほとんど忘れることはないということです。
『学びを結果に変えるアウトプット大全』より引用
単語を覚え口に出してアウトプットすることで、その単語が記憶に定着し結果として語彙力が上がります。
効果2.単語の正しい発音・アクセントが身につく
音声と同じタイミングで発音することで、単語の正しい発音やアクセントが身につきます。
例えば「ノーランテゥ」という音(便宜上カタカナにしています)が聞こえてきたとき、すぐに「not until」だとわかるでしょうか。
日本人の多くは「not until」を「ノットアンティル」という音だと勘違いしており、そのように発音します。
しかし本当の発音は「ノーランテゥ」。これが「思いこみの音」と「実際の音」とのズレです。
スクリプトをみるとそこには「not until」がある。ここで初めて「not until」は「ノーランテゥ」という発音なんだと認識するわけです。
「思い込みの音」と「じっさいの単語の音」のギャップを埋める。それがオーバーラッピングの効果
このように、オーバーラッピングをしていくことで「not until=ノット アンティル→ノーランテゥ」のように発音が矯正されていき、単語と正しい発音・アクセントとのリンク付けがされていきます。
効果3.英語の抑揚・リズムが身につく
英語には独特の抑揚・リズムがあります。
よく「日本語には抑揚やリズムがなく、英語はある。だから英語は聞き取りづらい」ということが言われますが、その通り。
脳は聞き慣れない音の強弱やリズムを処理するのに時間がかかるからです。
その処理速度を上げるのにオーバーラッピングが最適。
英語の抑揚やリズムを手に入れることで、文章として聞き取れる幅が確実に広がります。
効果4.英語特有の「音の変化」が身につく
「音の変化」とは英語特有のルールのことで、文章の並びやシチュエーションによって単語の発音が変わるというものです。
例えば『I like him.』という文章。質問への返答として『I like him.』を言うときに、状況によって発音の仕方が異なります。
『Do you like him?』は『彼のことが好きですか?』と聞いており、質問の意図は彼を【好きかどうか】です。
つまり、返答で『彼』を強調する必要がありません。従って『I like him.』は『アイライキィム』のように『him』の発音が弱くなります。
一方の『Who do you like?』は『誰を好きなの?』と聞いており、質問の意図は【誰を】好きかということ。
つまり、返答で誰が好きなのかを強調する必要があるので、『I like him.』は『アイライクヒム』のように『him』の発音が強くなります。
このように、シチュエーション次第で同じ文章も異なる発音になるのが英語。オーバーラッピングをすることで、音の変化を身につけることができます。
参考:『音の変化を習得する|リエゾン(連結)・リダクション(消失)・フラップ・弱形の基本ルール4つとおすすめの教材を解説』
効果5.ネイティブが話すスピードに慣れる
音声と同じタイミングで発音することで、強制的にその速さについていかなくてはいけません。
最初は音声スピードについていくのに必死だと思いますが、やり続けていくとだんだんとネイティブが話すスピードに慣れていることに気づきます。
この効果を実感するのはオーバーラッピングを初めてすぐ!とはいきませんが、英語学習はスポーツと同じ。
コツコツと練習を積み重ねていきましょう。
オーバーラッピングの注意点
オーバーラッピングのやり方はいたってシンプル。
【英文を見ながら英語音声と同じタイミングで発音していく】これだけです。
しかし、注意したいポイントが2つ。
- スクリプトを覚えようとしない
- 内容をあらかじめ理解しておく
それぞれ解説していきます。
注意点1.スクリプトを覚えようとしない
覚えようとして取り組んではいけません。オーバーラッピングの目的はあくまで英語音声への慣れと発音・リズムなどの習得。
スクリプトを覚えようとするトレーニングは暗唱になってしまい、学習の効果も変わってきます。
オーバーラッピングを行っていて結果的にスクリプトを覚えてしまうのは問題ないですが、初めから覚えようとしてはいけません。
参考:『レシテーション(暗唱)の効果・やり方・おすすめの教材|英語コーチが徹底解説』
注意点2.内容をあらかじめ理解しておく
オーバーラッピングをする前にあらかじめ内容を理解しておきましょう。
そうすることでオーバーラッピングをしている時に『あれ、今の文章ってどういう意味?』のように気が散ることがなくなり、前述した5つの効果を最大化できます。
また、効果を最大化するという意味では、【オーバーラッピングにおすすめの教材】で後述しますが、読んだら意味が理解できる教材を選ぶことが重要です。
オーバーラッピングの効果的なやり方
それでは、注意点をふまえた上でオーバーラッピングをやっていきましょう。
STEPは5つあります。
順番にみていきましょう。
STEP1:スクリプトをみず音声を3回聞いて概要を把握
まずはスクリプトを見ずに、音声を最大3回まで聞きましょう。
初見でどれくらい聞けるかを音声ごとに試すことで、実践力が身につきます。
STEP2:スクリプトを読み分からない箇所を調べる
スクリプトを見ると分からない単語や文法があると思うので、意味を調べましょう。
このとき、教材についている日本語訳は参考程度にして、極力自分で調べることをおすすめします。
STEP3:返り読みはせずに精読を行う
終わったら、次は精読です。
精読の詳しいやり方は『精読の効果と具体的なやり方・おすすめの教材もレベル別に紹介』を参考にしてください。
STEP4:オーバーラッピングをする
いよいよオーバーラッピング。
音声と同じタイミングでスクリプトを見ながら発音しましょう。
初めは1文ごとでも構いません。
慣れてきたら2文・3文と増やしていき、最終的には音声ぜんぶをオーバーラッピングできるようになるまで行ってください。
STEP5:シャドーイングをする
オーバーラッピングができたら、シャドーイングです。
教材は同じものを使いますが、やり方が違います。
『シャドーイングの効果や知っておきたい注意点。正しいやり方とおすすめの教材も|英語コーチが徹底解説』
オーバーラッピングにおすすめの教材
教材はどれでも良いというわけではなく、選ぶポイントがあります。
さらに、以下のポイントはオーバーラッピングに限らず、シャドーイングやリピーティング、レシテーション(暗唱)をするときに全く同じことが言えます。
教材選びのポイント
- 読んだら概要が把握できる、難しすぎないものを選ぶ
- 音声とスクリプトが用意できるものを選ぶ
特に最初のポイントは重要で、何度読んでも話の概要が分からない難しいものは教材に向いていません。
その点を踏まえた上で、慎重に教材を選びましょう。
おすすめ教材:WEBでやりたい場合
紙のテキストはいやだ。
という方は、以下の3つがおすすめ。
- ニュースで学ぶ現代英語
- VOA Learning English
- TED TALKS
それぞれ詳しく解説していきます。
ニュースで学ぶ現代英語
NHKが発信する英語学習サイト。
ニュースがそのまま学習教材になっておりハードルが高そうですが、速度調整やセンテンスごとの学習がサイト内でできてしまうという非常に優れた作りになっています。
世の中の情勢を掴みつつ英語学習したいなら「ニュースで学ぶ現代英語」一択です。
VOA Learning English
アメリカ合衆国政府が運営する国営放送「VOA:Voice of America」が、英語学習者のために作ったサイト。
レベル分けされた学習教材と、実際のシチュエーションを基に英語を学べるリアルさが学習意欲を掻きたてます。
日本語訳がない点は少し残念ですが、生の英語を学べるのでおすすめです。
>>公式サイト:VOA Learning English
TED TALKS
毎年大規模な世界的講演会「TED Conference」を運営する「TED」が運営するサイト。
サイト内には各専門分野の著名人がスピーチをする動画が、カテゴリ別や人気別に表示されています。
パソコンからアクセスすると速度調整や音声を聞きながらスクリプトの確認をすることができ、オーバーラッピングにおすすめです。
>>公式サイト:TED TALKS
おすすめ教材:紙のテキストでやりたい場合
紙のテキストで学習したい
という方には、以下の2つがおすすめ。
- TOEIC 公式問題集
- 決定版 英語シャドーイング【改訂新版】
詳しくみていきましょう。
TOEIC 公式問題集
パート3,4の音声を使ってオーバーラッピングをしましょう。
1音声あたりの時間が30秒〜60秒とオーバーラッピングに適しており、スクリプトと音声もついているのでやりやすいです。
ただ速度調整機能はないので、パソコンでやる方はMacであれば『QuickTime Player 7』、WIndowsであれば『windows media player』を使いましょう。
決定版 英語シャドーイング【改訂新版】
言語学者の門田修平氏が著者の教材。
タイトルに「シャドーイング」と書いてありますが、オーバーラッピング教材としても問題ありません。
Stage1−3でレベル分けされており、Stage1では『温泉について』や『図書館で』などの日常会話をシーン別で学べます。
Stage2・3では先ほど紹介した『VOA』が出てきたり、オバマ前大統領のスピーチが教材になっていたりとビジネス色が強くなっていきます。