この記事でわかること
- 精読の効果と注意点
- 具体的かつ実践的な学習方法
- おすすめの参考書
- 合わせてやりたい学習
精読は、リーディング力を上げるためには避けられない学習。
TOEICであればPart5,6,7に、ビジネスシーンであれば資料やドキュメントを読むときに精読力が必要になります。
この記事では、精読の効果や注意点とおすすめの教材、そして精読と合わせて行いたい学習を紹介していきます。
精読とは
精読とは
:「じっくり読めば英文解釈が完璧にできるようになる」ためのトレーニング。英文解釈とは、英単語と英文法の知識を使用し英文の意味を正しく理解することを指す。
つまり、精読をやる前に単語と文法が完璧にインプットできているかを確認することが重要です。
基礎ができてない状態で精読しようとしても、逆効果!
【どれくらいのレベルをどの程度できていれば完璧なのか】については、以下の基準を参考にしてください。
単語
:中学英単語レベルのインプット
:英→日が1単語0.5秒以内にできる
文法
:中学英文法レベルのインプット
:例文も使って詳しく説明できる
この基準を満たしていなければ、精読ではなく単語と文法をまずは徹底して学習しましょう。
基礎知識がない状態で精読をしても英語力は伸びず、結果として時間をムダにするだけです。
参考:『英単語の正しい覚え方|エビングハウスの忘却曲線に基づいた効率的な学習』
参考:『英文法の正しい覚え方|エビングハウスの忘却曲線に基づいた効率的な学習』
リーディングのプロセスは文字知覚と意味理解がある
リーディングには大きく【文字知覚】と【意味理解】の2つのプロセスがあります。
このうち【文字知覚】はそもそも単語を見たことがあり知っているかというレベルの話なので、文字知覚ができない=単語力がまったく足りないということ。
つまり、リーディング力をあげる=意味理解力をあげるということになります。
- 文字知覚ができない=単語、文法から徹底的にやり直し
- 意味理解力をあげる=リーディング力をつける
また、意味理解力は【正確さ】と【速さ】から成り立っており
精読は意味理解力のうち、とくに重要な【正確さ】にフォーカスした学習です。
速読・多読との違い|学習の目的とやり方が異なる
精読・速読・多読はおなじリーディングのトレーニングですが、目的と学習方法が異なります。
学習 | 目的 | 学習方法 |
---|---|---|
精読 | 英文構造を理解し 正確に読む | SVOCの記入 スラッシュリーディング 返り読みしない |
速読 | (精読ができる上で) 英文を速く読む | WPMの計測 返り読みしない |
多読 | (精読ができる上で) 総合力をあげる | WPMの計測 返り読みしない |
正確さはともかく速く読んで大意をつかめれば良いから、精読はやらず速読だけやれば良い気がするけど
という人がいますが、この考え方はよくありません。
なぜなら、精読力がついていない状態で速読学習をしても、身につくのは文章を読んで目にはいった単語をもとに推測するテクニックだけ。
その推測すら見当違いの可能性があります。
速く読めるようになりたい方こそ、精読学習で正確さを身につけてから速読・多読へとシフトしましょう。
速読の記事はこちら↓
多読の記事はこちら↓
精読の効果と注意点
精読をやるべき理由が明確になったので、ここからは精読の効果と注意点について解説していきます。
精読の効果は以下の3つ。
- 文の構造を把握できるようになる
- 返り読みをしないようになる
- スムーズな聞き取りも可能にする
それぞれ詳しくみていきましょう。
文の構造を把握できるようになる
【精読の正しいやり方】で後述しますが、精読学習ではスラッシュリーディングをするSTEPがあります。
スラッシュリーディングとは
:文中のSVOCを把握したうえで、意味のかたまりごとに区切りながら読むこと。区切りをペンなどでスラッシュ(/)することからこの名前がついた。
下の画像のようなイメージです。
スラッシュリーディングの効果が最大限に期待できるのが、長文を読むとき。
長文によくでてくるのが関係代名詞など、単語や文を修飾し一文を長くする文法。
スラッシュリーディングで意味のかたまりを捉える練習をしておけば、文の構造を苦労することなく把握できるようになります。
返り読みをしないようになる
返り読みとは、いちど読んだ単語や文章に戻って読むこと。
いわゆる【日本語的な訳】を頭につくりながら読んでいる人は、返り読みをしてしまっているケースが多いです。
意味のかたまりにスラッシュを入れながら読むことで、返り読みから脱出し文章を英語の構造のまま理解するクセが自然と身につきます。
ちなみに、返り読みを避けるべき理由はふたつ。
- 読むスピードが遅くなる
- リスニングに悪い影響を与える
ひとつめは、返り読みをすることで読むスピードが遅くなるから。
上の図を見れば明らかですが、返り読みはいちど前の文章に戻るのでタイムロスが発生しますよね。
時間がもったいない。
ふたつめは、リスニング力をあげる重荷になる可能性があるから。
詳細はつぎで解説します。
スムーズな聞き取りも可能にする
リスニングができない原因のひとつとして、英語音声を聞きながらきれいな日本語訳に直そうとしていることがあります。
日本語は「主語→目的語→述語」の構造で、英語は「主語→述語→目的語」。
それなのに聞こえてきた文章をきれいな日本語訳に直していると、当然ながら聞き取れなかったり、聞き取れたとしても内容の理解に遅れてしまいますよね。
この状況を改善できるのが精読。
前述したように精読学習によって返り読みをしなくなることで、文章を英語の語順のまま理解するクセが自然と身につきます。
つまり、聞こえてきた文章も英語の語順そのまま理解できるようになっていくのです。
精読の正しいやり方
精読の効果と注意点が分かったところで、つづいては精読の具体的な学習方法をお伝えします。
ぜんぶで5STEP。
STEP1:英文を読みながらSVOCを単語や英文のしたに書く
STEP2:書いたSVOCと解説のSVOCが合っているか確認する
STEP3:英文にスラッシュを入れて意味のまとまりをつくる
STEP4:付属の音声を聞きながら区切りを意識して黙読する
STEP5:音声なしで区切りを意識し意味を考えながら音読する
おすすめの教材についてはこの後に紹介しているので、まずは正しい学習方法から理解していきましょう。
STEP1:英文を読みながらSVOCを単語や英文のしたに書く
まずは英文を読みながら、SVOCといった文の要素を書いていきます。
とくに悩む必要はなく、『これかな?』と思うままにどんどん単語や英文のしたに書いていきましょう。
もしSVOCが解説に載っていない場合はこのSTEPを省略してもOK
なぜなら、SVOCを書くプロセスは英文にスラッシュを入れやすくするための前作業みたいなもので必須ではないから。
もちろん、このSTEPを踏むことで文構造を強く意識できるので、精読学習の効果は高くなります。
STEP2:書いたSVOCと解説のSVOCが合っているか確認する
SVOCが一通り書けたら解説をみて、自分の書いたSVOCと合っているかを確認しましょう。
間違えた箇所は赤ペンなど目立つ色で修正し、このあとのSTEPで読むたびに文型を確認できる状態にしてください。
STEP3:英文にスラッシュを入れて意味のまとまりをつくる
次に、英文にスラッシュ(/)を入れて意味のまとまりを作っていきます。
このように、まとまった意味を一区切りとしてスラッシュを入れていきます。
英文に最初からスラッシュが入っている場合は次のSTEPに進みましょう。
解説にスラッシュが載っている場合は、自分が書いたものと見比べて間違えた箇所は赤ペンなどで修正してください。
STEP4:付属の音声を聞きながら区切りを意識して黙読する
スラッシュができたら、音声を聞きながら意味のまとまりを意識して黙読しましょう。
音声をペースメーカーとして、同じスピードで黙読する
黙読は1〜3回まで、それ以上はやる必要はありません。
あくまでこのSTEPの目的は、音声の文章読み上げスピードがどれくらいかを知るためだからです。
STEP5:音声なしで区切りを意識し意味を考えながら音読する
最後のSTEPは、音声なしで意味のまとまりを意識し文章の意味を考えながら音読しましょう。
ポイントは2つあります。
- 返り読みはせずに、ゆっくりでも文章の意味を考えながら音読する
- 最終的に音声と同じスピードで意味を理解しつつ音読できるようになる
返り読みはせずに、ゆっくりでも文章の意味を考えながら音読する
音読をしているので実質不可能ですが、返り読みはしないようにしましょう。
そして文章の意味を考えながら音読、つまり英語の語順のまま意味のまとまりごとに内容を理解しながら音読してください。
これが非常に大事です。
初めはゆっくりでも構いませんので、必ず意味のまとまりごとに内容を理解しながら音読です。
最終的に音声と同じスピードで意味を理解しつつ音読できるようになる
初めのうちはゆっくりペースの音読になると思います。
全く問題ありません。
ただ、最終的にはSTEP4で聞いた音声と同じスピードで、かつ意味を理解しつつ音読できるようになりたいです。
なので、できるまで何回も音読を繰り返しましょう。
精読のレベル別おすすめ参考書
精読のやり方が詳しくわかったところで、次はおすすめの精読教材です。
効果的な学習を左右するといっても過言ではありません。
本屋さんやネットで良質な精読の参考書を選ぶ3つのポイントがあります。
本のレビューがAmazonとかであるけど、あくまで参考に留めよう。以下のポイントのほうが遥かに大事!
この記事で紹介している参考書も、すべて以下のポイントをふまえて選んでいます。
- 単語や文法が難しすぎない
- 解説にSVOCなど文構造について言及がある
- 書籍の発行年度は古くてもOK
単語や文法が難しすぎない
精読は英文解釈をできるようにするためのトレーニングなので、単語や文法は難しすぎないものを選ぶことがポイントです。
レベルが高い参考書だと、わからない単語や文法を調べるだけで時間がかかったりモチベーションの低下を招きかねません。
【難しすぎない】レベルとは、中学英単語と英文法で構成されているテキストを指します。
解説にSVOCなど文構造について言及がある
解説にSVOCがついていることもポイントです。
「英文解釈=文構造を把握する」ことなので、一文の中で主語述語をはじめとしたSVOCの解説があるものが好ましいです。
書籍の発行年度は古くてもOK
また、書籍の発行年度にこだわらないようにしましょう。
英語の文構造は昔から同じなので、発行年度が古くても良著はたくさんあります。
実際にこの記事で紹介する参考書の中には、第一版の発行が30年ほど前のものもあるくらい。
初級編(TOEIC400点程度まで)
TOEICスコア換算で400点までの初級者に該当するかたは、以下の3つがおすすめ。
- 1万人の答案から学ぶ 日本人の英語リーディング 29のルール
- 英語長文レベル別問題集(1)超基礎編
- 基本からわかる英語リーディング教本
それぞれ詳しくみていきましょう。
1万人の答案から学ぶ 日本人の英語リーディング 29のルール
1日30分で一つのルールに取り組み、全部で29のルールを会得して英文法のポイントを総ざらいできる参考書。
ルール毎に完結している構成のため、すでにインプットできているルールは飛ばして知らない/身についていないルールに絞り学習することができます。
先生一人に生徒二人という会話形式による解説が特徴です。
構成は①文法問題②会話形式の解説③一言まとめ(ルール)④練習問題とその解説となっています。
英語長文レベル別問題集(1)超基礎編
中学英語の総復習に最適な参考書。
精読といえば真っ先に思い浮かぶ良著です。
12編の長文を収録し、1編は30分程度で終えられます。
付属のCDを使い文の切れ目も確認できるので、英語を英語の語順で理解するリーディングの最終目的に繋げやすいのもおすすめポイント。
基本からわかる英語リーディング教本
英文の構造把握や品詞の特定ができるように、個々の単語をカテゴリ化して品詞(名詞、形容詞、副詞など)と働き(主語、目的語、補語)の観点から書かれた参考書。
難易度は上の2冊よりも難しめです。
解説がこれでもか!と思うくらい基礎から細かく書かれているため、読み込むことで英文解釈レベルが数段上がります。
中級編(TOEIC400点〜600点程度まで)
TOEICスコア換算で400〜600点までの中級者に該当するかたは、以下の2つがおすすめ。
- ビジュアル英文解釈 (Part1)
- 英文読解スマートリーディングLESSON BOOK
それぞれ詳しくみていきましょう。
ビジュアル英文解釈 (Part1)
Part1とPart2の計2冊で構成される参考書。
私自身この本を何周もして、現役で国内私大トップに合格しています。
個人的にも英語コーチとしても、非常におすすめです。
レイアウトの評判が良くないですが、コピーを取るなどして工夫すれば解決します。
英文読解スマートリーディングLESSON BOOK
一般的な英文解釈の参考書とは違い、文法参考書のような【短文+解釈に必要な知識】の構成になっている参考書。
本文はじめに文型を正しく判断する8つの基本ルールが紹介されていたり、カンマ(,)やダッシュ(ー)などの記号の使い方も説明されているので英文解釈+αが学べる良書です。
参考:上級編(TOEIC600点以上)
精読はリーディング力向上の第一歩として行う要素の強いトレーニングです。
上級編は大学受験や海外留学を控えている社会人、もしくは論文などを読む研究者などが対象と考えています。
TOEICスコアアップや仕事の英文メール対策についてはTOEIC600点以上の方は速読トレーニングを行った方が良いです。
英文解釈教室 新装版
前述した『ビジュアル英文解釈』と同じ著者による参考書。
約40年前から支持されているだけに、内容と解説のクオリティが高いです。
難易度は高いですが、他の英文解釈本にはない分詞構文や強調構文の詳細な解説までも網羅されている完全本といっても過言ではありません。
ただし、『ビジュアル英文解釈』と同じようにレイアウトに問題があるのでこちらも対策する必要はあります。