TOEICのパート3,4が聞き取りできない…
レシテーションをしよう!
TOEICパート3,4が聞き取りできずに悩んでいませんか?
レシテーション(暗唱)で解決できます。
この記事では、誰がやっても効果のでる・ムダな出費のないおすすめの暗唱方法をTOEIC満点の英語コーチが解説していきます。
ちなみに暗唱トレーニングはTOEICだけではなく英会話にも有効です。
なぜPart3,4の聞き取りができないのか
英語学習をするにあたって大事なのは「納得感」。
なぜこの学習で伸びるの?という理由を知らないと人はモチベーションが下がってしまうので、なぜ伸びるのかという理由を知ることが最もだいじです。
そこでまず、パート3,4で聞き取りができない原因を解説し、そのあと暗唱の効果をお話しします。
リスニングができない原因は、大きく3つあります。
- 聞き取ることに集中しすぎて内容を忘れてしまう
- 語彙力や文法が「知っているだけ」になっている
- 「音の変化」を知らない/知っていても習得してない
それぞれ詳しくみていきましょう。
聞き取ることに集中しすぎて内容を忘れてしまう
あ、今managerって聞こえた。promotionも。うーん、昇進のことを言っているのかな?あれ、内容忘れた。。
リスニングをしていて、こんなことはありませんか?
文章としてではなく単語が断続的に聞こえてくる場合は、聞き取り(音声知覚)に集中しすぎている可能性が非常に高いです。
図で表すと、したの左図の状態。
- 音声知覚:聞こえてくる音がなんていう単語か認識すること/聞く
- 意味理解:認識した単語と文法を組み合わせて文章として意味を理解すること/理解する
パート3,4が聞き取れない場合、原因のほとんどが音声知覚に頭を使いすぎて、内容の理解(意味理解)ができず、覚えておく(短期記憶)余裕がないというもの。
理想は右図の状態。
楽に聞けて楽に理解できると、短期記憶に頭を使えるので内容もどんどん入ってくるというわけです。
パート3,4を攻略するためには、理想の状態に近づけていく必要があります。
語彙力や文法が「知っているだけ」になっている
聞き取りができない原因のひとつに、単語や文法を「ただ知っているだけ」になっていることが挙げられます。
『単語は単語帳をぜんぶ覚えたし、文法も問題ない。あとはひたすら聞くのみ』と思っている方は要注意。
知識として知っているだけではダメ。
TOEICに限らず英語をリスニングするためには自分が使える単語や文法の幅を広げなければいけません。
「音の変化」を知らない/知っていても習得してない
模試や問題集でリスニングをしていて『今なんかゴチャゴチャって聞こえたな。英文見てみよ。。え、こんな簡単な単語と文法だったの?』みたいな経験はありませんか?
それは音の変化ルールによって単語がつながったり消えたりしているからです。
たとえば「What are you doing ?」の発音。
「ワットアーユードゥーイング」ではなく、「ワラュドゥーィン」となります。
What are you doing ? の発音
×「ワットアーユードゥーイング」
↓
◯「ワラュドゥーィン」音の変化が起きる
この音の変化ルールはパート3,4に限らずリスニングセクション全体で起きていますが、長文になるとかなり厄介。
音の変化ルールを知った上でちゃんと習得していないと『ゴチャゴチャって聞こえたな』という状態が起きます。
『音の変化を習得する|リエゾン(連結)・リダクション(消失)・フラップ・弱形の基本ルール4つとおすすめの教材を解説』
暗唱がリスニングに効果的な4つの理由
これまで述べた聞き取りができない原因を全て解決してくれるのがPart3,4のレシテーション(暗唱)です。
暗唱の効果は大きく4つあります。
- 使える語句や文法の幅が広がる
- 音の変化パターンを覚えられる
- 会話の内容を瞬時につかめる
- 会話の流れを予測しやすくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
使える語句や文法の幅が広がる
パート3,4の英文を暗唱をすることで、使える語彙力が身につきます。
「話す」というアウトプット行為によって覚えた単語や文法が、単語帳や文法書でただインプットした物よりも忘れにくくなるという理論は、脳科学によって証明されています。
「書く」「話す」といった運動神経を使った記憶は、「運動性記憶」と呼ばれます。運動性記憶の特徴は、一度覚えるとその後はほとんど忘れることはないということです。
『学びを結果に変えるアウトプット大全』より引用
文章の中で使える活きた語彙力と文法力を身につけることで、Part3,4のリスニングが非常にスムーズになります。
音の変化パターンを覚えられる
前述したように、Part3,4で聞き取りができない原因の一つは「音の変化」。
暗唱をすることにより、文章の中で単語がどのような音に変化しているのかをインプットすることができます。
インプット量が多くなるほど『ゴチャゴチャ聞こえてくる』という状態から脱出し、聞き取りがかなり楽になっていくのです。
会話の内容を瞬時につかめる
TOEICの問題には頻出するいくつかのパターンがあります。
特にPart3,4は顕著で、シチュエーションや人の名前こそ違えど類似した会話内容は頻繁にでてきます。
つまりPart3,4の暗唱を行えば、似たような問題がTOEIC公式テストにでてくる可能性が高く、会話の内容を瞬時にイメージできるというわけです。
実は日常言語のかなりの部分が決まり文句で構成されている、という研究もあります。
『外国語学習の科学ー第二言語習得理論とは何か』より引用
第二言語のデータベースを増やし、自然な表現を身につけるために、……よく使う表現や、例文、ダイアローグなどを暗記することが効果的でしょう。
一方で注意しなければいけないことも。
暗唱を惰性で行うと「使えない英文をそのまま覚えているだけ」になり、それでは全く意味がありません。
それは学校で英語の先生に『例文暗記してくるように!』と言われてひたすら覚える状況に似ており、意味がありません。
- 暗唱内容を文法的に理解し
- 情景を頭でイメージしながら
暗唱を行うことが重要です。
会話の流れを予測しやすくなる
会話の内容が掴みやすくなることで、余裕がでます。
そうすると、『あ、次の展開はこんな感じかな』と予測ができることも。
日本語でも、自分が聞き手の時に『たぶんこの後言うことって〇〇かな』『オチは△△だろう』と予測することがあるかと思います。
それは今までに同じような会話のパターンがストックされているからに他なりません。
パート3,4の暗唱をすることで、【先読みする力】が身につきます。
※先読みは上述した「聞きながら次のシーンを予測する先読み」以外にも、「音声の前に設問と選択肢を読み会話を予測する先読み」があります。こちらも合わせてチェックしましょう。
暗唱のやり方|準備から実践まで5つのSTEP
暗唱の絶大な効果が分かったところで、暗唱の具体的なやり方を解説していきます。
STEP0:暗唱のゴールとおすすめの教材
先ほども言ったように、ただただ惰性で暗唱してもリスニング力は上がりません。
楽に聞けて楽に理解する状態をつくるには、暗唱している文章内容を頭でイメージすることが重要です。
頭で内容をイメージしながら暗唱できるようになる
暗唱の素材はもちろんPart3,4。教材はTOEIC公式問題集を使いましょう。
音声素材はパート3,4で合計69こありますが、これからお伝えするSTEP1ー5までのトレーニングでは、1題ずつ行いましょう。
ここでは、公式問題集のパート3No.32-34を例にSTEP1−5まで解説していきます。
No.32-34 スクリプト
W: I love this jacket! Do you have another one just like it?
『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』より引用
M: I’m afraid that’s the last one we have in medium. Is there something wrong with it?
W: There’s a small tear on the seam of the left sleeve. But I really like it a lot!
M: Well, if you buy the jacket as it is, then I can offer you a deal because of the tear. How does a 20% discount sound?
順番にみていきましょう。
STEP1:スクリプトは見ずに音声を最大3回聞く
まずは音声を通しで最大3回聞きます。
この時、スクリプトは見ずに音声だけに集中してください。
音声の倍速は行わず、本番と同じ通常の速さで聞きましょう。
STEP2:スクリプトを読んで分からない単語/文法を調べる
次にスクリプトを読んで、分からない単語や文法がないか確認します。
もしあれば下のように黄色マーカーなどで強調した上で、どのような意味なのかを辞書等で調べてください。
W: I love this jacket! Do you have another one just like it?
『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』より引用
M: I’m afraid that’s the last one we have in medium. Is there something wrong with it?
W: There’s a small tear on the seam of the left sleeve. But I really like it a lot!
M: Well, if you buy the jacket as it is, then I can offer you a deal because of the tear. How does a 20% discount sound?
調べ終わったら、スクリプトの一行目から順番に読んでいき意味を確認しましょう。
このあとのオーバーラッピングやシャドーイング、そして暗唱の効果を最大限高めるためです。
この時に注意したいのが、公式問題集の解答に書いてある日本語訳をあまり見てはいけないということ。
なぜかというと、この日本語訳がベタベタの日本語だから。
公式テスト受験時にリスニングで同じようなことをすると、聞き取りに余裕がなくなってしまいます。
『I love/this jacket! Do you have/another one/just like it?』のように意味のまとまりに意識しながら訳していき、文章の意味を理解しましょう。
STEP3:オーバーラッピング&シャドーイングをする
『読んだら意味が分かる』状態を作れたら、次のSTEPはオーバーラッピングとシャドーイングです。学習イメージはこんな感じ
なぜこれらのトレーニングをするかというと、下の左図のようにリスニングができる理想の状態になるには、前提として「自分が発音できる音しか聞こえない」というのがあります。
暗唱で覚えた自信が発する単語の発音が素材音声の発音とぜんぜん違ったら、学習の意味はほとんどありません。
なので、まずオーバーラッピングやシャドーイングをして素材音声の発音を真似することをします。
そうすることで素材音声の発音が覚えられるので、素材音声と同じ発音で暗唱をすることができ、結果としてリスニングができるようになるというわけです。
参考:オーバーラッピングの効果とは?注意点もふまえた正しいやり方とおすすめの教材まで|英語コーチが徹底解説
参考:シャドーイングの効果や知っておきたい注意点。正しいやり方とおすすめの教材も|英語コーチが徹底解説
STEP4:スクリプトを見ながら音読する
次に行うのがスクリプトを見ながらの音読。
音読をする目的は、オーバーラッピングやシャドーイングでインプットした発音が正しいかを確かめるためです。
したがって、音読はスクリプトを見ながら一文ずつ行いましょう。
具体的なやり方は以下の通りです。
- I love this jacket!」をスクリプトを見ながら音読
- 素材音声を再生して、自分の発音と合っているか確認
- 合っていれば④に進み、間違っていたら①を繰り返す
- 「Do you have another one just like it?」をスクリプトを見ながら音読…のように、一文ずつ①〜③まで行う
- 最後の文章「How does a 20% discount sound?」まで終わったら、今度は2文ずつ①から行う
- ①〜⑤までを、音読する文章量を1周ごとに1文ずつ増やしながら行う
これを繰り返すと、最後は「I love this jacket!」から「How does a 20% discount sound?」まで通しで音読することになります。
ここまでできたら、次のSTEPです。
STEP5:スクリプトを見ずに発音する=暗唱
おそらくSTEP1ー4までを行うと、文章をすでに暗記しているかと思います。
しかもただの暗記ではなく、しっかりと文章の意味を理解し正しい発音ができる暗記です。
あとは、「I love this jacket!」から「How does a 20% discount sound?」まで一度もつっかえることなく発音できるまで、原則スクリプトは見ずに発音していきましょう。
スムーズに発音できるようになったらこの素材での暗唱は終了です。
次のPart3 No.35-37の音声でSTEP1ー5まで同じように繰り返してください。
まとめ:公式問題集2冊分はやりたい
暗唱、なかなか大変なトレーニングですね。
自分で書いていても『こんなタフなトレーニングをしていたのか』と思います。
しかし愚直にやり続ければTOEICは結果がついてきます。
先ほどは公式問題集を一冊だけ紹介しましたが、パート3,4で伸び悩んでいる人は最低でも公式問題集2冊分のパート3,4を暗唱するのがおすすめです。